香港という宝を放棄する習近平
矛盾の多い一国二制度は結局は欧米自由主義経済圏と中国とをつなぐための方便でしかなかった。
先進各国は中国の無法に目をつぶり、安い労働力と生産物という恩恵を享受しようとした。
それは経済の効率化を阻み、イタリアなどが未だに成熟した工業生産活動ができていないことからも明らかなように、甘えを生んだ。
香港に「紐づけ」をすれば中国への投資は正当化できると考えられた。
外国人は香港を通じて中国本土株に投資ができていた。
中国との合資会社の設立が詐欺的なものであったとしても、競争の名のものとに他社に後れを取られるなと煽られ、無責任な中国投資の論調が無軌道に横行した。
香港という金の卵を産む雌鳥を絞め殺してまで習近平が手に入れようとするのは独裁の完成だ。習近平にはそれだけの不安があるのだろう。
常に強硬手段しか取れないのは昔からの中国指導部の無能さの証でもある。
中国国内で外国人が会社を設立する場合、半々の出資、そして僅かに中国側の出資が多く中国側が支配的な会社でなければならない。
そのためコネやツテを頼って出資者を見つけ、ブローカーに紹介をしてもらうことになる。
それで50億出して合計約100億で工場を建設する。
「先に工場を建設したほうが時間的に早い」などとせっつかれ、50億出して工場を建設する。
ところが土壇場になって50億出すはずの出社が雲隠れしたり、連絡がつかないだの共産党指導部から指導があっただのと自体が「必ず」変わった。
そして出資が頓挫しかける。
慌てるのは日本企業。すでに50億をかけ工場は完成に近づいている。
このまま頓挫して50億がドブでは株主に申し開きが立たない。
そうなれば経営陣は失脚する。
それではと、ブローカーが名目的に残りの50億も日本側が出してはどうかと打診してくる。
その50億を中国側出資者が出したことにして誰か別の人物による合弁企業ができるという。できれば共産党指導部の縁故の者ならやってくれるだろう、と。
合計して100億を出し、中国に工場と合弁会社ができる。
もちろんこういうブローカーへの仲介料も払い、尽力してくれた共産党指導部幹部へも謝礼を支払う。
億という金が動く。
そうして順調に生産が進んでいると思ったのもつかの間、労働者から賃上げ要求が激しくなり、景気対応のために様々な無理難題がふっかけられるようになる。
そのうち開発投資への民間負担分だとか提携だとか、次々と金がせびられようになる。
お手盛りメディアが外国企業による人材の酷使や不当な低賃金を取り沙汰したりもする。尖閣問題が起きれば日系企業が狙い打ちににされ、政治的な問題すら紛れ込ませてくる。
中国と日本の経営陣は対立する。
とうとう値を上げた日本企業は会社を解散、売却なりをして撤退しようと決意する。
ならば退職金を払えと経営陣が迫られる形になる。
日本企業がこれを負担する。中国側は撤退の意思はないからだ。
しかしその退職金は労働者に支払われることはない。結局、上層部、中間層が奪ってしまう。
そしてなぜか出資金の50億を返せと言ってくる。
契約解除にする以上は出資したことになっている50億を返せというのだ。
その金は日本企業が出したのだがそんな書面はない。
あってもそれなら日本企業は違法に出社をでっちあげて会社を設立したことになる。
逮捕拘禁、罰金さえチラつかせてくる。
仕方がないと50億を出す。
そうしてその資本額に基づいて、撤退する日本企業は契約違反、工場を放棄させられる決定に同意させられる。
50億の工場はそのまま持っていかれる。
100億出して解散価値はゼロ。
日本企業の手元には何にも残らない。
これがざっと中国と取引することだ。
こういうことを違法で無法とするにしても香港のブローカーが介在していたりする。
彼らは一国二制度のもとで、西側に認められた経済活動をしているのだ。
日本企業は彼らとの取引を失敗とされることはない。
香港に全ての取引が紐付けられているから、中国本土の無法もまっとうな経済活動とされてきた。
「中国特有の取引慣行」などと、体裁を取り繕い、都合よく誤魔化されてきただけだ。
日経の古い記事でも見たらよい。
「中国投資」を煽り、セミナーは活況だった。まるでマルチ商法の説明会のように大企業がひっかかった。